カテゴリー「文化・芸術」の232件の記事

2014年5月26日 (月)

こども展―名画にみるこどもと画家の絆

森アーツセンターギャラリーで開催中の
「こども展 名画にみるこどもと画家の絆」展をみてきました

会期:2014年4月19日(土)~6月29日(日)
URL: http://www.ntv.co.jp/kodomo/


※以下、掲載する写真は美術館より特別に写真撮影の許可を得ています

この「こども展」 子どもだけというのは不気味かも・・・と
少し敬遠はしていたのですが、前評判もあって気になっていました。

パリ・オランジェリー美術館で大好評だった展覧会「モデルとなった子どもたち」
(邦訳)を日本向けに再構成されたものと聞いていたからです。

そして、実際に観てみて、多くの人をひきつけた理由がわかったように
思いました。

ルソー、ルノワール、モネ、撮影許可はありませんでしたが、ピカソやマティス
など、有名作家がそれぞれ身近な子どもの姿を描いています。
わが子であったり、その友人や一族の子どもであったりと・・・

また、父親である画家がわが子を描けば、その子も画家にという
流れで、それらの作品もおそらくは画家の家に代々、大切に伝わった
ものではないかそんなことにも思いを巡らしました。

そうして観ていると、普段の彼らの作品の作風の違いを超えて、
何か画家が子どもに抱く、愛情や想いを強く感じました。

一方、モデルとしての子どもたちは、あまりにも純粋すぎて、作家たちが
握っていた絵筆も彼や彼女たちの純粋さに負けてしまって、どことなく
角のとれた、柔らかい表現にもなっているようでした。

子どもたちを前に、嘘をつけずにいる画家の姿が想像できて、案外、
描くのが難しいのが、子どもたちだったのかもしれないと思いました。

展覧会の会場全体で、同じテーマでありながら、すべて異なる
子どもたちの表情がそこにはあって、日頃の自分の生活に立ち返って
みると、

自分の息子や娘も、親である私が期待するようには、一様でなく、
日々変化し成長していることを気づかせてくれました。

画家が子どもをみつめた眼差しのように、
私たちも子どもを見つめなおす必要があるのではないか、
そうしたメッセージを私はこの展覧会で受け止めました。

よかったら、ぜひ、ご覧ください。

少年や少女であった頃の自分に出会うような、
そんな瞬間もあるかもしれません。

Kodomo_1
手前:アンリ・ルソー ≪人形を抱く子ども≫

Kodomo_2
手前:ピエール・オーギュスト・ルノワール
≪ジュリー・マネの肖像≫

Kodomo_3

右:ピエール・オーギュスト・ルノワール
  ≪ジャン・ルノワールの肖像≫
中:ピエール・オーギュスト・ルノワール
  ≪道化姿のクロードルノワール≫

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クロード・モネ
≪青いセーターを着たミッシェル・モネ≫

Kodomo_5

2014年5月16日 (金)

美味しんぼと福島、伊丹万作氏の文章

美味しんぼと福島の件をネットで調べていて
原作者 雁屋哲氏のブログにたどりつき、そこでいろいろ
拝見していたら、伊丹万作氏の文章にたどり着きました。

最近、思想や見解を長い文章で読むことが少なくなった
のですが、一読の価値はあると思います。

伊丹万作・戦争責任者の問題
http://www.aozora.gr.jp/cards/000231/files/43873_23111.html

もうひとつ 伊丹氏の文章のきっかけとなった記事

自発的隷従論

http://kariyatetsu.com/blog/1665.php

2013年10月30日 (水)

菊池寛と文藝春秋

文春学藝ライブラリーで再刊された

『天才・菊池寛』 解説は大好きな 坪内祐三氏なのですね
せっかくなら 創業者割引ではないですが もう少し安く
してくれたらいいのに・・・ 記念価格というのもいいかと




ということで、先に手にしたのは

金子勝昭著『歴史としての文藝春秋』

ある意味、古書道楽的には 菊池寛の個性というか
人間性がよく浮き彫りになっていて さらに著者の
愛情のようなものも感じられて うれしい一冊でした。

そして、読み終えての感想は
誰にでも才能はあって、菊池寛のようにその才能を
活かしきることはできないかもしれませんが、

それでも時代と一緒に生きて、埋没しなければ
何か道が開けるのではないか そんなことを思いました。


2013年9月16日 (月)

ルーヴル美術館展 -地中海 四千年のものがたり‐

東京都美術館で 9月23日まで開催されている
「ルーヴル美術館展 -地中海 四千年のものがたり‐」を観てきました。

■公式サイト
http://louvre2013.jp/

ルーヴル美術館のコレクションはすごいです。
そして今回の展覧会では、通称「ギャビーのディアナ」のように、初めてルーヴルの館外で展示される作品もあり、とても貴重な機会となっています。

今回は主催者の許可をいただいて撮影することができましたので、写真とあわせて感想を記します。

まず、多神教のギリシャ時代、ローマ時代の様子から、キリスト教の誕生と発展。また、覇権の拡大とともに始まったオリエントとの融合。これらをつぶさに感じることのできる品々。とても素晴らしいです。

とくに、神像や皇帝の彫刻。テラコッタの副葬品などの様々な品々で顔が彫られたり、描かれたりしているのですすが、当時の生活の中で人々と共にこれらがあったことを想像しながら拝見すると、何か時空を超えてその時代に迷い込んだような気分になりました。

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左:赤像式アンフォラ ミュソン(画家) 前500-前490年頃 テラコッタ
右:カルピス(水瓶):ギリシャの英雄ヘラクレスによるエジプト王ブシリスの殺害
  クレオフラデスの画家、前490-前480年頃、テラコッタ

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ディアデマ(宝石入り帯状髪飾り)を冠したエジプトの地母神イシスの頭部
ローマ(?)、150-200年、大理石

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左:エジプト女王クレオパトラ7世
中:イシス女神の姿で表されたエジプト女王クレオパトラ7世
右:エジプト風に表されたエジプト女王クレオパトラ7世
※クレオパトラ7世の在位は前51‐前30年

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タナグラ人形
イタリアからトルコに至る墓地や聖域から出土している
テラコッタの女性像。

とても優美で綺麗。テラコッタの素朴さもあってひかれました。

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手前:最高神官としてのローマ皇帝アウグストゥス(在位 前27-後14年)の肖像
    前27年頃、大理石

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手前:エジプト最後の女王、クレオパトラの自殺、1690年頃、クロード・ベルタン
右奥:エジプト最後の女王、クレオパトラの自殺、1500-50年頃
    ジョヴァンニ・ピエトロ・リッツォーリ

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アルテミス:信奉者たちから贈られたマントを留める狩りの女神
通称「ギャビーのディアナ」、100年頃

「清楚な容貌と肩に手をやる自然なたたずまいが美しいこの彫像は、ギリシア風の短い衣装などから、狩りの女神アルテミスとされています。18世紀、スコットランドの画家ハミルトンが、ローマ近郊ギャビーで発掘しました。紀元前4世紀の名高い彫刻家プラクシテレスの様式を汲む作品の、ローマ時代の貴重な模刻です。1808年にルーヴルに収蔵されて以来、初めて館外に出品されます。もちろん、日本初公開となる、ルーヴルの傑作のひとつ」 公式サイトより

後姿も素晴らしいです!表情をどの角度からどれだけみても新鮮で息がとまります。

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墓碑:夫婦の別れの場面
アテネ、ギリシヤ、前400年頃

とても美しいレリーフで何度も何度も見てしまいました。
墓碑にみとれるのも変なのですが、とても美しかったです。


幸せな時間でした。もし当時に暮らしていたとしても、すべての文物を一同に見ることは不可能なはずですが、こうして鑑賞していると本当に旅をしているような気分になりました。
古代の人々が何を美しいと考えたのか、どのような歴史や風土がその背景にあったのか、そうしたことを意識しつつも、美しさに素直に反応する自分もいます。

そうした感情とともに良質な時間を過ごすことができとても幸せでした。

2013年7月 1日 (月)

浮世絵Floting World 珠玉の斎藤コレクション展 ・ 三菱一号館美術館

三菱一号館美術館で開催中の

浮世絵Floting World 珠玉の斎藤コレクション 展の内覧会に先日行って来ました。

※開催期間 6月22日(土)~ 9月8日(日)

http://mimt.jp/ukiyoe/

Gaikan_960x1280
まず 興味を持ったのは 斎藤コレクションとは何?ということでした。

浮世絵の多くに私たちが触れるときの多くは、個人のコレクターの方が
いらして、そのコレクションが展示されている美術館に足を運ぶことが
多いのです。例えば、太田記念美術館や山口県立萩美術館・河上記念館
のように

ですが、斎藤コレクションについては存じ上げず、パンフレットやネットで
調べてみると

神奈川県議や参議院議員を務められ、現在、川崎市観光協会連合会会長
の斎藤文夫氏が長年にわたり、浮世絵をコレクションされていいるものと
わかりました。

斎藤氏は、これらのコレクションを館長を務める川崎・砂子の里資料館
にて無料で公開されています。

■川崎・砂子の里資料館
http://kawasaki-isagonosato.jimdo.com/

今回、三菱一号館で展示されている作品は、2012年5月~7月、フランスの
ロートレック美術館の企画展で展示されたもので、今回の企画展での
展示においても、一号館の西洋建築空間で浮世絵を観るという実験が
なされています。

これは、ジャポニズムという言葉に象徴されるように、19世紀に欧米人が
体験した浮世絵を私たちが同じように接する機会とも考えられます。

実際、浮世絵と同じ空間にロートレックが置かれていたりして、江戸の人と
西洋との美意識の比較や共通点など、様々に思いをはせることができました。




Ukiyoeten_1280x960_3


さて、この斎藤コレクション数が膨大なようで、今回の企画展でも3回の
展示替えがあります。

その1期、浮世絵の黄金期 -江戸のグラビア を今回拝見したのですが、
まさしく肉筆の浮世絵にうっとり、また、役者絵などの浮世絵版画に舞台と
絵画がコラボした江戸の娯楽の豊かさにうらやましさを感じたりしました。

美人画では、懐月堂派の美人画には生の艶やかさがありひかれました。

懐月堂派とは解説によると

「菱川師宣没後に台頭した浮世絵の画派で
菱川派と異なり、顔は小さくふくよかで切れ長の目、
着物は豪快で意匠効果を十分に演出した太い太線を
用いた立ち姿の美人が多かった」とのことです。

作者不詳『延宝美人立姿図』
Kaigetsudo_2_960x1280_2


懐月堂度繁『美人立姿図』
Kaigetsudo_960x1280

菱川師宣と見比べてみると、たたずむような空間を意識はさせることはなく、
ただただ描かれた女性主人公であるように気分にさせます。

鈴木春信の『風流やつし七小町』これは斎藤コレクションのみすべてを
お持ちのようで、この7作品をすべてみることができたりと とても豪華です。

浮世絵では師弟関係や画派などが頭の中に入っているととても観るのが
楽しくなります。この展示はその時代と人の流れにあわせて展示構成されて
いるので、誰にとっても親しみやすいです。

喜多川歌麿 の 『当世美人三遊 芸妓 柳はし』の黒い袖頭巾と茶屋の女の
黒い掛衿がきいていると思うのですが、こうした黒の使い方は ロートレックにも
みられるのでは・・・ なんてことも思いながら観ました。

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また、初代歌川豊国の役者地顔六玉川 の玉川はこの玉川がどこかな?
と思いながら みてみました。

調べてみると、通常の歌枕で使われる六玉川と一致しないものもあるようで、
私の教養不足で嘘を言っているかもしれませんが・・・・・
あとでちゃんと調べてみようとおもいます。

『役者地顔六玉川 高野の玉川 二代目尾上松助』
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ちなみに、高野の玉川(こうやのたまがわ)は、弘法大師の和歌がしるされて
いるようで、この筆跡は役者さん自身の筆になるようです。

 「わすれても 汲みやしつらん 旅人の 高野の奥の 玉川の水」  『風雅和歌集』

歌川国芳の『忠臣蔵十一段目夜討之図』の構成は素晴らしいと
思いますした。実際の舞台装置はどうだったろうかと考えてしまいます。
Cyushinngura_1280x960


このように、役者や舞台と浮世絵の融合が日常にあったことは
とてもすごいことだと思います。そしてせっかくなので写楽をご紹介。

東洲斎写楽『二代目市川門之助の伊達与作』
Syaraku_960x1280

この夏は 浮世絵をたっぶり楽しめることができそうです。
良質なコレクションを楽しむよいチャンスかと思います。

2013年6月16日 (日)

秩父の女流俳人、馬場移公子 のこと

中嶋鬼谷編著

『峡に忍ぶ 秩父の女流俳人、馬場移公子』を読んだ。

私の郷里の近くに秩父があるので、親しや懐かしさがあって、
秩父を題材にしたものがあれば 読むようにしている。

先日も土屋文明が万葉集の研究で郷里の近くを歩いている
足跡を追った本があったので読んだように

さて、馬場移公子(ばばいくこ)のことを 私は初めて知った
秩父で俳人というと、金子鬼太を思い浮かべるが、そのお父様が
医者であり俳人だった。その 金子伊昔紅(かねこいせきこう)との
出会いから、この女流俳人が世に出るところとなった。

■馬場移公子関連サイト(日本経済新聞)
 
 
http://www.nikkei.com/article/DGXBZO16293970T11C10A0000000/

戦争未亡人で婚家から実家にもどり、体もあまり強くはなかった
らしいけれども、秩父の中に生き、俳句を通じて出会う人々の交流が
何か生きる支えになっていたのではないか

その実力は、水原秋桜子にも認められ 「馬酔木」の同人にも
なっている。

この本をつうじて、人生の中に俳句があるとはこういうものか
という、普段は知らないことが少しわかったように思います。

2013年5月 1日 (水)

国宝大神社展 観てきました!

Daijinjya_01


先日、東京国立博物館で開催されている 国宝大神社展を観てきました。
駅のホームでみかけたアドボードで「大神社」という文字をみると、
これはなんだろう・・・ と思ったのですが、

よくよく足を運んでみると国内有数の神社の宝物が集まっており、神無月
ではありませんが、各地の神社の宝物が東博に集まっていることを
そのようになぞらえてもいいくらいでした。

■大神社展ホームページ
http://daijinja.jp/

個人的に圧倒されたのは 鹿島神宮の直刀で平安時代のものです。
このように美しいものが宝物として眠っていることを知りびっくりました。
また、鹿島神宮にも興味を持っていて、なかなか行けないなあと
感じていたときだったので、偶然に驚きもしました。

Daijinjya_02

このほか 神社の宝物は その形から意図あるいは神意を直観させる
造形が多く、春日神鹿御正体や神坐像などみていると、私たちも
古代人と同様に、同じ心の動き方をしているのではないか
そうしたことを思いました。

Daijinjya_03

Daijinjya_04
このほかにも、以前、うかがったことのある宗像大社の宝物を多数みることが
できてうれしかったです。

宝物の中に、石を削ってつくられた舟の形代があったのですが、これは
海上交通の安全を祈り神への供物として作られたものなのですが
その素朴さに 祈りのカタチの 素直さを感じたりもしました。

なかなか これだけど宝物が一同に会することはないと思います。
旅気分にもなれますし、次の目的地を探すことができる場所にもなる
かもしれません。

おすすめの企画展です。ぜひ、ご覧ください。


※会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。


2013年3月14日 (木)

ルーベンスのほっぺ    Bunkamuraザ・ミュージアム 「ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア 展」より

Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の

「ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア 展」

のイベントに行ってきました。

Rubens_1

■公式サイト
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/13_rubens/index.html

ご自身もルーベンスファンでいらしゃる チーフキュレーターの
宮澤政男さんと美術史を専攻してこられたTBSの小林悠アナウンサーの
トークショーも会場内で行われて、とても贅沢なイベントでした。

Rubens_2

お二人のお話をうかがっていると、いつものように自分のリズム
で観るのとは違って、先に様々な情報をインプットしてから
鑑賞することができるので、ルーベンスをとても身近に感じました。

宮澤氏ご自身のルーベンス体験の数々からは、ルーベンスに魅せ
られているゆえの興奮が伝わってきて ファンの心理はよくわかり
ますし、嬉しかったです。

また、実際の展示も、作品と鑑賞者の距離がとても近くて、さらに
ルーベンスの工房のしくみや、時代背景などが丁寧に解説されて
いて、ルーベンスの作品をただやみくもにみせるのとは違って
ルーベンス学校に来ているようなそうした印象を持ちました。

これは監修者の性格かもしれませんが、天才画家と称される
ルーベンスをその名前だけで企画展とするのではなくて
ちゃんと向き合っている姿勢が感じられて 私は好きです。

実際に作品を観てみると、本当に素晴らしいです。
この人物の表情はどのように生み出されるのか、何度も何度も
丁寧に一枚、一枚を観ていったのですが、もしやと感じたのは
あるとき ほっぺが浮き上がるようにふくらみを持って描かれている
ことを感じて、ルーベンスの秘密はこのほっぺにあるのでは
ないかと思いました。

Rubens_3
          【写真】ペーテル・パウル・ルーベンス 《聖ドミティッラ》

そういえば、女性のお化粧でも、古代から人は「ほおべに」を使って
いますし、一般の肖像画でも当然みられるので、ルーベンスに
限った話ではないのですが、それでも何かそこに秘密があるのでは
ないか・・・そんな探偵気分にも少し浸りながらバロックの名画を堪能する。
やはり贅沢です。

まぶたに残る残像は時間を経過しても消えずに、目を閉じると
今も浮かび上がってくるように感じます。

そして、そのまま目を閉じていると、浮かびあがってきた絵画の世界に
私自身が入り込んでしまったような気分にもさせてくれます。

Rubens_4

          【写真】ペーテル・パウル・ルーベンス(工房)《自画像》

日本国内にあるコレクションとは違い、その絵に会えるのは
一生のうちに何度あるかどうか。

そうした貴重な作品に出会えた余韻は いつまでも大切に
慈しんでいきたいと思います。

2013年3月10日 (日)

美術家たちの証言 東近美の『美の眼』から

一度読めなかった本を再読した。
それは 美術出版社刊 の

「美術家たちの証言
 東京国立近代美術館ニュース『現代の眼』選集」である。

『現代の眼』は東京国立近代美術館が刊行している定期刊行物
なのだけど、開館60周年を経過した美術館の定期刊行物から
編集された本書はさながら、近現代美術史の足跡をたどることが
できる美術史の参考書なのですが

それ故に、一度は読み続けることができなかったものの
改めて手にして、この数日でじっくりと読むことができました。

その中で個人的に印象が深かったのは 次の3点です。

まず、一つ目は 東山魁夷が名作の一つ「道」を描いた頃を
振り返る記述があり、作品のヒントとしては青森県八戸の
種差海岸(たねさしかいがん)なのですが、道を描くより
10年ほど前に種差海岸を訪れたときに住んでいたのが
「結婚もしないで大井町の幼稚園に間借りしていた頃」と
振り返っていらして、この大井町が東京であれば、現在、
私が住んでいる土地に近いな・・・と思い、さてここは
どこだろうと興味を持ちました。

大井町という地名は都内以外にもいくつもあるので
定かではありませんが、また書籍などで調べてみようと
思います。

そうした土地に興味を持ちながらその東山の回想を
読み込んでいくと、さらに作品に対する想いが
しっくりと書き刻まれていて、作品を思い出したり
ネットで調べた氏の年表(戦争体験や家族の死、結婚など)と
私自身のこれまでなどを振り返りつつ
考えをめぐらしました。

次に印象に残ったのは、駒井哲郎が恩地孝四郎について
書いた文章で、そこには師弟の付き合いがあったわけですが、
駒井氏の作品について、恩地氏が 詩を寄せたエピソードが
紹介されていて、師弟の付き合いの中で詩を交えるということが
とてもいいなあ~と思いました。

そして3番目ですが、栄久庵憲司氏が森正洋氏について書いた
文章の最後にあった記述です。栄久庵氏の評が彼の出自にも
影響はあると思いますが的確なのです。

「地蔵の優しさと慈悲が衆生を直接救う。地蔵は人を知っている。森は
人を知らねばならない。人を知ってはじめて「森美学」が生まれる。
それは肉体の外在化であった。人間との共生は肉体との共生でもある。
手で持ち、口にする。これほど人間に近い道具はほかにあるか。
地蔵ですら人のかたちを模した。理想的な人間のかたちの外在化、
肉体の延長上に森はかたちを結んだ。単純に整理されたかたちは
人を超えて人を感じさせた。「森美学」の基本は人に安心感をもたらす
ことだ。これを基盤に人を心配りよく迎えるかたち、迎賓の心とも
いうえきか。
 
 
 プロダクトデザインは人々が満足感を得て、はじめて自己充実感に
浸れる職業である。自らのみに生きるのではなく、他の中に自らを
発見して生きる、そんな職業である。森はそれを徹底しているところに
どこか殉教者を思わせる。人々の、人々による、人々のための民主主義。
民主主義は森の人生の定めかもしれない。敢えていえば「森美学」は
デモクラシーのかたち化といっていい。人を守り、心ゆくまで楽しんで
いただく。森は九州のひと隅でそんな思いのかたち化に生涯をかけている
一介の男、プロダクトデザイナー森正洋である。」


おそらく、また本書を手にするときは、違う感動があり感慨があるだろう。
そのとき、身近に出会った作品たちにも影響を受けているはずだ。

その作家の語り口から、その作品を思い出してもいい。とにかく
楽しみ方が膨らむ。とても貴重な一冊です。

2013年3月 3日 (日)

琳派から日本画へ ―和歌のこころ・絵のこころ― 山種美術館

琳派を観に行くと知人に伝えたところ、
琳派とはどんなものですか?と尋ねられ、答えに窮してしまった。

俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一といった名前や風神雷神図、
尾形光琳の手による燕子花図屏風や八ツ橋図屏風といった
イメージを思い出すことはできるのだけど

金ピカなやつ・・・と言うのでは言葉足らずのように思え
適切な表現がその時はうまく説明できませんでした。

そのお目当てにしていた美術展

山種美術館で催されている特別展
『琳派から日本画へ ―和歌のこころ・絵のこころ―』が
http://www.yamatane-museum.jp/exh/current.html

その解を私に与えてくれる美術展であったことが
大きな収穫となりました。

図録に添えられた英文のタイトルは

Spirit of the Rimpa School とあり Rimpa School自体が

○○派の意味ではあるのですが 私にとっては 琳派の授業を
受けたような美術展でした。

それは、そもそも和歌をしたためるために用いられた料紙の
装飾から発展していった過程を知り、さらに、100年単位の時間を
いくつも超えて作風が受け継がれていったことをよく示す
良質な作品群で構成されていたことが大きく寄与したのだと
思います。

一方で、こうした作風を流行やトレンド、ビジネスといった
美術とは異なる次元のものと置き換えて考えてみても、
同様のことが言えるのではないかと感じながら作品群を
拝見しました。

例えば何か流行が生じるのにはそのきっかけは小さな種子のような
出来事であることはよくあります。

同じように企業経営を行っていても、それぞれの事業体が
異なる個性を持つのは当然であり、後世にもその企業が
事業を継続していくには、展示されている作品のように
高い完成度が必要であることを思いました。

日本画は模写により学ぶ過程が多く、多くの型が受け継がれて
おり、退屈のように感じられることもあります。
ですが、良質な作品が持つ、無駄のない構成と宿している生命力
は本当にすごいです。

こうした美を感じる力を養えれば、現代の作品を観る上でも
無駄にはならないでしょう。

また、とても大切なことと思うのは、実は私たちもまた
琳派が作る時の流れの上にいるということではないでしょうか。

普段の美を探るとき、意識しているか、無意識かは別として
多くの日本人の感覚の中に琳派が根づいており、これを私たち
自身が後世に伝えることができる芸術概念ではないかと思います。

元来、和歌との結びつきから派生したものであればこそ
同様に気持ちを言葉に変える時に自然と思想概念として、
琳派に描かれるような世界をイメージしているのではないでしょうか。

もちろん、イメージを形にしていくのが芸術ですから
当然のこととは思うのですが、作家ではない人の心に沸き起こる
作品以前の想像やイメージの世界において、太い柱のように
琳派的なものは機能しているように考えます。

何か留まるをしらない散文になってしましたが 心にとめて
また様々な作品と出会っていきたいです。

ちなみに、琳派についてネットの検索では以下のように紹介されています。

-----------------------------------------------------------------------

【琳派】デジタル大辞泉
 江戸時代の絵画の一流派。俵屋宗達・本阿弥光悦を祖として尾形光琳が大成し、
 酒井抱一などに受け継がれた。鮮麗な色彩や金泥(きんでい)・銀泥を巧みに
 用いた装飾的な画風を特色とする。宗達光琳派。光琳派。

【琳派】ウィキペディア
 桃山時代後期に興り近代まで活躍した、同傾向の表現手法を用いる造形芸術上
 の流派、または美術家・工芸家らやその作品を指す名称である。本阿弥光悦と
 俵屋宗達が創始し、尾形光琳・乾山兄弟によって発展、酒井抱一・鈴木其一が
 江戸に定着させた。

 大和絵の伝統を基盤として、豊かな装飾性・デザイン性をもち、絵画を中心
 として書や工芸を統括する総合性、家系ではなく私淑による断続的な継承、
 などが特質として挙げられる。光琳が宗達を、抱一が光琳をそれぞれ傾倒し、
 その影響を受けている。狩野派や円山・四条派といった他の江戸時代の流派は、
 模写を通じて直接師から画技を学んだのに対し、琳派では時間や場所、身分が
 遠く離れた人々によって受け継がれたのは、他に類を見ない特色である。
 同じような主題や図様、独特の技法を意識的に選択・踏襲することで流派の
 アイデンティティを保持する一方で、絵師独自の発見と解釈が加わり再構成
 されることで、単なるコピーやエピゴーネンではない新たな芸術を生み出した。

 かつては尾形光琳・乾山とその作風を継承した酒井抱一らを一つのグループと
 みなし「光琳派」と呼んだり、その先駆者と考えられる俵屋宗達・本阿弥光悦
 らを含めて「宗達光琳派」と呼んでいた。現在は「琳派」という呼称が一般的
 である。
 
 背景に金銀箔を用いたり、大胆な構図、型紙のパターンを用いた繰り返し、
 たらしこみの技法などに特色が見られる。題材は花木・草花多いが、物語絵を
 中心とする人物画や鳥獣、山水、風月に若干の仏画を扱った作品もある。

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