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2013年3月10日 (日)

美術家たちの証言 東近美の『美の眼』から

一度読めなかった本を再読した。
それは 美術出版社刊 の

「美術家たちの証言
 東京国立近代美術館ニュース『現代の眼』選集」である。

『現代の眼』は東京国立近代美術館が刊行している定期刊行物
なのだけど、開館60周年を経過した美術館の定期刊行物から
編集された本書はさながら、近現代美術史の足跡をたどることが
できる美術史の参考書なのですが

それ故に、一度は読み続けることができなかったものの
改めて手にして、この数日でじっくりと読むことができました。

その中で個人的に印象が深かったのは 次の3点です。

まず、一つ目は 東山魁夷が名作の一つ「道」を描いた頃を
振り返る記述があり、作品のヒントとしては青森県八戸の
種差海岸(たねさしかいがん)なのですが、道を描くより
10年ほど前に種差海岸を訪れたときに住んでいたのが
「結婚もしないで大井町の幼稚園に間借りしていた頃」と
振り返っていらして、この大井町が東京であれば、現在、
私が住んでいる土地に近いな・・・と思い、さてここは
どこだろうと興味を持ちました。

大井町という地名は都内以外にもいくつもあるので
定かではありませんが、また書籍などで調べてみようと
思います。

そうした土地に興味を持ちながらその東山の回想を
読み込んでいくと、さらに作品に対する想いが
しっくりと書き刻まれていて、作品を思い出したり
ネットで調べた氏の年表(戦争体験や家族の死、結婚など)と
私自身のこれまでなどを振り返りつつ
考えをめぐらしました。

次に印象に残ったのは、駒井哲郎が恩地孝四郎について
書いた文章で、そこには師弟の付き合いがあったわけですが、
駒井氏の作品について、恩地氏が 詩を寄せたエピソードが
紹介されていて、師弟の付き合いの中で詩を交えるということが
とてもいいなあ~と思いました。

そして3番目ですが、栄久庵憲司氏が森正洋氏について書いた
文章の最後にあった記述です。栄久庵氏の評が彼の出自にも
影響はあると思いますが的確なのです。

「地蔵の優しさと慈悲が衆生を直接救う。地蔵は人を知っている。森は
人を知らねばならない。人を知ってはじめて「森美学」が生まれる。
それは肉体の外在化であった。人間との共生は肉体との共生でもある。
手で持ち、口にする。これほど人間に近い道具はほかにあるか。
地蔵ですら人のかたちを模した。理想的な人間のかたちの外在化、
肉体の延長上に森はかたちを結んだ。単純に整理されたかたちは
人を超えて人を感じさせた。「森美学」の基本は人に安心感をもたらす
ことだ。これを基盤に人を心配りよく迎えるかたち、迎賓の心とも
いうえきか。
 
 
 プロダクトデザインは人々が満足感を得て、はじめて自己充実感に
浸れる職業である。自らのみに生きるのではなく、他の中に自らを
発見して生きる、そんな職業である。森はそれを徹底しているところに
どこか殉教者を思わせる。人々の、人々による、人々のための民主主義。
民主主義は森の人生の定めかもしれない。敢えていえば「森美学」は
デモクラシーのかたち化といっていい。人を守り、心ゆくまで楽しんで
いただく。森は九州のひと隅でそんな思いのかたち化に生涯をかけている
一介の男、プロダクトデザイナー森正洋である。」


おそらく、また本書を手にするときは、違う感動があり感慨があるだろう。
そのとき、身近に出会った作品たちにも影響を受けているはずだ。

その作家の語り口から、その作品を思い出してもいい。とにかく
楽しみ方が膨らむ。とても貴重な一冊です。

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